「刑務所のルールブック」を見ていて、私は推しを一人には決められなかった。それぞれが、あまりにも違う痛みを抱えていたからだ。
しかし、気づけば私が目で追っていたのは、「いつも正しく生きようとして、うまくいかなかった人」たちだった。
ㇵニャン(イ・ギュヒョン)
ソウル大卒のエリート薬剤師だが薬物中毒になり、恋人に密告され、投獄される。
普段はいいたい放題で明るく天真爛漫に見えるが、寂しかった幼少期、性的マイノリティ問題で心に抱える闇は深い。
そもそも薬物に手を出したきっかけも、日本に留学中、孤独感に耐え切れず手を出してしまった。
だから彼の笑顔は、見ている側の心を少しずつ削っていく。
ユ大尉(チョン・へイン)
誠実に生きてきた職業軍人。賢く、人望もある人物。
権力者の父を持つ部下のいじめを制御できず、殺人が起きてしまった。更にはその殺人の濡れ衣を着せられ、”悪魔のユ大尉”というあだ名をつけられ、投獄される。だが彼は、誰よりも「正しくあろうとした人間」だった。
まっすぐ生きてきた彼にこの不名誉は耐え難く、また、部下を助けられなかったことでも挫折感を味わっている。
法子~ポプチャ(キム・ソンチョル)
何度も刑務所に入っている、再犯者。
頭が良く、社交性も高いが家が貧しく、まっすぐな道を歩むことが出来ないでいる。
母親が病気で手術の為にお金が必要だったが、主役のジェヒョクが手術費用を出してくれたことにより、
忠誠を誓う。
彼は自由を望んでいるようで、実は「戻れる場所」を必死に探しているだけなのかもしれない。
心を打たれるシーン
薬物中毒の為、普段はへらへら明るく振舞うㇵニャン(あだ名はへロリン)。彼は常に同房の仲間たちに毒舌を披露する。”皆を怒らせて、一体何の得があるのだろう”と感じるほどだ。
だが、そんな彼は実際はとても賢い男である。時には”芯を食った的確なアドバイス”で仲間の心を救うこともある。
ㇵニャンと同い年のユ大尉は、彼とは正反対の人間だ。人に甘えることが出来ず、バリバリの縦社会で生きてきた職業軍人。そんなユ大尉からすれば、ㇵニャンの傍若無人ぶりは目に余る存在だった。
同い年の二人は犬猿の仲で、トムとジェリーのようにいつも小競り合いをしている。それはこのドラマのお約束ともいえる”和みシーン”でもある。
しかし、いつも喧嘩ばかりの二人だからこそ印象に残る場面がある。ユ大尉がㇵニャンを頼ったシーンだ。
「兄が自分のせいで仕事を辞めてしまった。自分の上訴の為に力を尽くしてくれるのはありがたいが、申し訳ない。」そう打ち明けるユ大尉に、ㇵニャンはこう言う。
「たった30歳の男が、一人で何が出来る。素直に頼っていいんだ。その方がお兄さんも嬉しい。」
事も無げに言うㇵニャン。ユ大尉の口からは決してでてこない言葉だ。
ㇵニャンの存在が、ユ大尉の心を確かに軽くしたシーンだ。
ポプチャは、ジェヒョクに忠誠を誓っている青年だ。
いつも飄々としているのでわかりにくいが、これまで傷ついた経験を”なかったこと”にして生きてきたのではないだろうか。
助けてもらうことに慣れていなかったポプチャは、初めて自分に手を差し伸べてくれたジェヒョクにあっという間に心を開く。
本来、ポプチャはジェヒョクより先に出所する予定だった。だが最後の1か月、陰謀によって独居房に入れられてしまう。
独居房はつらいはずなのに、ポプチャは人並み以上に作業をこなし、話しまくる。←独居房の意味とは、という状態だ。(笑)
その時彼は言う。
「ジェヒョクがメジャーリーグに行くときに必要だから、出所したら英語を勉強するんだ」
実際、出所前日。ジェヒョクはポプチャに「英語を勉強しながら待っててくれ」と携帯番号を渡す。
そしてポプチャの”夢”は現実になる。その瞬間、ポプチャは涙を浮かべる。
いくら自分が忠誠を誓っていても、元犯罪者とのつながりは野球選手にとって御法度だ。
それを理解した上で、ポプチャは夢”として語っていたのだとわかる。
だからこそ、あの涙が胸に残る。
私はそう思う。
似てない3人の共通点とは?
似てない三人の共通点とは何だろうか。
それは”根が悪い人間ではない”という点ではないかと思う。
ユ大尉は濡れ衣の為除外したとして、ポプチャとㇵニャンは犯罪行為に手を染めている。
しかし、その二人の背景には、確かに同情の余地も残されている。
甘えだと言われれば、それまでかもしれない。
それでも「正しく生きたい。」という思いが、確かにあったように感じた。
そんな不器用さが、私の心を捉えて離さなかった。
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